当時の感触を蘇らせる歌がある。
北海道セイコーマートのCMで。
広大な草原のバックに流れるのは松山千春の「大空と大地の中で」。
1年前に突然死したお母さんが好きで昔よく歌っとった。ラブホを改造したようなコイン投入式の昔のカラオケルーム。普段喧嘩の絶えない夫婦だったけど機嫌が良い時ごくたまに家族で歌いに行った。
お母さんは途中にこの歌を、最後の締めに「サライ」を入れる毎回のお決まり。
そして更にお決まりと言えば、皆に一緒に歌わせてスススと隣に寄ってきて腕を絡ませてくる。
お母さんはヘビースモーカーで狭い個室の一室は煙でモクモクだ。はっきり言って全体的にウザい。
そんな当時はどーでも良かった記憶の断片が、
一曲の歌で鮮明に五感に蘇ってくる。
本人はもう居ない。
風化もしきれてない。
一緒に過ごした周りの人達の心に故人が生き続けるというのはきっとこういう事なんだろう。
ふいに何とも言えない想いで心がギュッとなる。